幕張 春の嵐

一日中、春の嵐という特権を与えられた風が吹き荒れていた。


春の海を見たいと思った。見たい見たいと願っていた。
左右方向に青が広がり、奥行きはあまりなくて、白い波が際立つ、湿った風がやや冷たい、砂の音がぱちぱちと渇いた、それを見たいと思っていた。

3年前にみた景色。それに、4年前にもみた。はじまりは、8年前にみた。それぞれに海の名前は違っていて、不思議に全ては良く似ていた。


あてもなく歩いて貝殻を集めて、人の疎らな橋のうえのベンチでいつまでも波音聴いている、という冬の海は文句なしに好き。嫌いとか苦しいとかいう感情なしに好き。

春は気持ちがざわざわとして、嫌いとか苦しいとかいう醜い感情をもろに抱えながら、海を見に行く。