春にして君をおもう

目覚めたとき、東の部屋が全きオレンジ色に染まる、というよりオレンジ色で充満している、という現象を今年初めて見た。ああ(そんな季節か)、というため息から一日が始まった。日の出の時刻と密に関係するということなのでしょう。ここに引っ越した春の頃、朝が来るたび異常な量の暖色が部屋に忍び込んで私を驚かせていた。そりゃもう尋常じゃないの。ドームみたいに色は形を成して、寝室を脅かす。


<本日な屋島


久しぶりにスイッチを作りました。もうナースコール使わん、いらん、と首を振ったその人は、今日私の作ったへんてこな色のスイッチを布団の上に転がしたままぼんやり見ていた。触れもしなかった。相変わらず目は遠くを見ているみたいだった。でも、土日そこに置いておいてもよい、と首を縦に動かした。わずかに。


やってくるのは、新しい季節ではない。

生まれてからの年の数だけ繰り返された、ただの春でありました。

もうよく知っているし、知っているだけに記憶に苛まれます。

しかし、飽きられることを怖いと思わない季節は強いよね。

何度でも、何度でも、現れては魅了してゆくから。